渡部忠世(編)
『東南アジア世界─地域像の検証─』
創文社、1980年
はしがき
ここに収録した多くの論文を通覧してみると、そのいずれもが長期間にわたる現地での研究と生活に根ざし、それぞれの学問的立場から具体的な諸事象を分析しようとしていること、そしていまだ不十分ながらも東南アジアという独自な内在的世界像を構築することを、共通的な問題意識としてもちはじめていることがわかる.……東南アジアを対象とする地域研究のあり方についての模索の一過程として、本書を江湖に問い、ご批判をいただきたいと思う.
(はしがきより)
はしがき:渡部忠世
第Ⅰ部 史的展開と社会構造
- マレー人家族における隔世代関係:坪内良博・前田成文
- 西スマトラ・ミナンカバウの社会構造──母系制を中心として──:加藤 剛
- タイ国における《イスラームの擁護》についての覚え書:石井米雄
- 「原住民委員会」をめぐる諸問題──支配と抵抗の様式に関連して──:土屋健治
- 永盛均田例の研究:桜井由躬雄
第Ⅱ部 政治統合と経済発展
- 東南アジアの地域主義──「従属体系」状況の変容──:矢野 暢
- ASEANにおける政治協力の制度化:山影 進
- ASEAN経済政策の分析:安場保吉
- 適正技術の移転と文化的制度的要因:市村真一
- シンガポール工業化における外資系企業と民族系企業:吉原久仁夫
- フィリピン経済の「成長の社会会計」──1965年および1969年産業連関表の比較分析──:江崎光男
- 結婚年齢と人口増加──タイの人口推計における吟味──:小林和正
第Ⅲ部 モンスーンと農業景観
- 水田の景観学的分類試案:高谷好一
- 伝統稲作の生態的適応──ビルマの乾季稲作における諸例──:渡部忠世・田中耕司
- 西ジャワ、パングランゴ山山地林における落葉落枝などの季節変化:山田 勇
- ヒマラヤの上昇とモンスーン気候の成立──第三紀から第四紀にいたる気候体制の変化について──:安成哲三
- 気候変動と湿潤熱帯の農業:福井捷朗